妊娠糖尿病は「妊娠中にはじめて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常」のことをいいます。 糖尿病で妊娠した場合は、糖尿病合併妊娠となり、管理方法が違います。 妊娠糖尿病で妊娠中の血糖管理が不十分だと、高血糖によるいろいろな合併症を起こしてしまいます。 できるだけ早期に見つけるために妊娠初期と中期検査を受けることが望ましいです。 検査は、75gブドウ糖負荷試験(OGTT)と言い、病院で行い診噺を受けます。

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妊娠糖尿病になりやすい人
- ● 糖尿病境界型
- ● 両親や祖父母など、家族に糖尿病患者がいる
- ● 肥満
- ● 高血圧や羊水過多症
- ● 妊娠中の体重増加が大きい
- ● 35歳以上の妊娠
- ● 尿糖が陽性
- ● 巨大児などの分娩経験
母体のインスリン分泌や働き(効き)が悪いと、高血糖になります。 母親の高血糖が胎盤を通っておなかの赤ちゃんにそのままの状態運ばれます。インスリンは運ばれないので、赤ちゃんが自分のすい臓からインスリンを分泌して調節しなければなりません。 インスリンは成長ホルモンなので、多く出しすぎると赤ちゃんが成長しすぎてしまい、結果、巨大児になったり生まれる時にいろいろな合併症を引き起こします。
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母体の合併症
● 流産・早産 ● 妊娠高血圧症候群 ● 羊水過多症 ● 尿路感染症 など -
胎児の合併症
● 先天奇形 ● 過剰発育・巨大児 ● 発育遅延 ● 胎児仮死 ● 子宮内胎児死亡 など -
新生児の合併症
● 低血糖症 ● 高ビリルビン血症 ● 呼吸障害 ● 低カルシウム血症 ● 多血症 ● 肥厚性心筋炎 など
赤ちゃんの大切な器官は妊娠初期(4週頃)から作られ始めるので、お母さんの妊娠初期の血糖が高いと先天奇形が起こりやすくなります。その種類はいろいろな器官(中枢神経系、心血管系、腎尿路系、消化器系、 耳や口の異常)などで起こる可能性があります。巨大児になると分娩中に肩甲難産となり、赤ちゃんが仮死状態になってしまったり、腕の神経麻舞を起こすこともあります。お母さんが妊娠中にケトアシドーシスを起こしたり、網膜症・腎症が悪化することもあります。
食べたものが消化吸収され、ブドウ糖となり血液中に入ります。 血液中のブドウ糖(血糖)はすい臓から分泌されるインスリンというホルモンにより全身の細胞に取り込まれ、エネルギーに変えられます。あまったエネルギーは、肝臓、筋肉、脂肪として蓄えられます。妊娠すると胎児の成長にあわせてエネルギー消費量が増えますが、胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモン「プロゲステロン」「プロラクチン」「コルチール」などの「インスリン拮抗ホルモン」が分泌されます。 その他に胎盤でインスリンを壊す酵素なども作られるためインスリンが効きにくい状態の「インスリン抵抗性」が強まります。 血糖値が上昇しやすくなり、糖代謝が正常な妊婦の場合は、すい臓からインスリンを多く出して血糖値を上げないように調節できるのですが、インスリン分泌が少ない方やインスリン抵抗性が強い『糖代謝異常妊婦』の場合は血糖が上昇して、下がりにくくなってしまいます。
妊娠中の糖代謝異常には、妊娠糖尿病 (GDM)、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠、の3つがあります。
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妊娠中の糖代謝異常と診断基準
>妊娠糖尿病
>妊娠中の明らかな糖尿病
以下のいすれかを満たした場合に診断します。 ・空腹時血糖値 ≧ 126mg/dl ・HbA1c 値 ≧ 6.5% ・随時血糖値 ≧ 200mg/dlまたは75gOGTT 2時間値≧ 200mg/dlの場合、「妊娠中の明らかな糖尿病」の疑いがあり 空腹時、Hba1Cの数値が基準を満たすか確認します。 妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と妊娠中の糖代謝の変化・影響を受けた 糖代謝異常、もしくは妊娠中に発症した1型糖尿病があります。 分娩後は再検査を受けて再確認が必要必須です。
>糖尿病合併妊娠
1.既に診断されている糖尿病 2.糖尿病網膜症がある
お母さんの妊娠初期の血糖が高いと先天奇形が起こりやすくなります。 妊娠がわかってから血糖コントロールを開始しても遅いので、妊娠前から良い血糖状態にしておく事が前提です。 安心して安全に妊娠出産するために、妊娠前から目標値内に収まるようにコントロールしましょう。妊娠中はお薬は飲めませんので必要な場合はインスリンに変更しておく必要があります。高血圧や脂質異常症の薬は飲めませんので主治医に確認が必要です。
妊娠中の運動はいろいろな効果があり、2型糖尿病や妊娠糖尿病、肥満を伴っている場合は、大変効果的です。注意するのは、絶対に無理をしないこと!お腹が張ったり、極端に暑いときや寒いときは外での運動は避ける。

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運動癒法の効果
- ● 基礎代謝を高めることで血糖コントロール改善
- ● 骨盤内の血流を改善
- ● ストレス解消・気分転換に友好的
- ● 腰痛・肩こり解消
- ● 足腰筋カアップで分娩時に必要な筋カ・体力の強化
- ● 肥満予防
身体の状態によっては、運動できない場合もあります!必す主治医に相談しましょう。
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運動できない場合
- ● 切迫流産·早産ほか産科的に問題がある
- ● 重症の網膜症・腎症・高血圧症
- ● 1型糖尿病などや血糖の変動が激しい方
- ● からだに痛みがあるまたは、問題がある
- ● 貧血
※1型糖尿病は運動可能ですが、低血糖に注意しましょう。
産後は自分の血糖管理より、育児が優先になりがちです。病院に行けない時もあるかと思います。今後や次の妊娠にむけて、糖尿病にならないよう、自己管理は必ず続けましょう。「妊娠糖尿病になった妊婦は、正常だった妊娠に比べて 7.4 倍糖尿病になる危険がある」「妊娠糖尿病の半数か近い将来糖尿病に発展した」「5年後20%10年後30%糖尿病になった」という統計があります。妊娠を期にそのまま糖尿病になる場合もあります。 産後には75g0GTTで再診断し、それぞれの体調や程度にあわせてフォローが必要です。
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糖尿病に進展しやすい人
- ● 肥満
- ● 妊娠早期に妊娠糖尿病と診断された
- ● 妊娠中の血糖値が高かった
- ● 糖負荷試験の陽性ポイントが多かった2点陽性、3点陽性
- ● インスリン分泌が少ない
- ● インスリン注射が必要だった、多かった
- ● 血縁者に糖尿病の人がいる
- ● 出生体重が2,500g未満
